映画の京都:古都、ロスト・イン・トランスレーション、枕草子

京都は数多くの映像作品の舞台となっています。太秦には映画村もあり地元の方にとってシネマは身近な存在なのかも。街を歩いているとドラマの撮影現場を見かけることも少なくありません。

大学院の先生に紹介されて観た川端康成原作の「古都」(1963)、清水寺や西陣の呉服問屋、大原、祇園祭、送り火のシーンなどが登場し、まるで京都観光ガイドみたいです。当時の市内はまだ京町家が多く残っていたのも伺えます。この後に山口百恵主演のリメイク作も観ましたが、そちらは雑な演出が気になるので、こちらの1963年バージョンをおすすめします
▲映画の京都も魅力的ですが、岩下志麻さんがひたすらお美しく、関東ご出身の岩下さんの京都弁も流暢です
ソフィア・コッポラの「ロスト・イン・トランスレーション」といえば新宿のパークハイアット、渋谷スクランブルスクエアといった印象が強いですが、作中にスカーレット・ヨハンソンが演じるシャーロットが一人で新幹線に乗って京都で平安神宮と南禅寺を訪れるシーンが登場します。孤独なシャーロットの心情を Air の「Alone In Kyoto」が音で物語っています。
▲コロナウイルス自粛中の人のいない平安神宮
ピーター・グリーナウェイ監督の「Pillow Book」は清少納言の「枕草子」が原作で京都が舞台。同監督の「プロスペローの本」と同様にスクリーンの中にさらなる映像がインサートされたり、台詞があえて聞きづらかったりと、難解で観る者を試す内容です。
音楽はブライアン・イーノ、撮影は名作「Hiroshima mon amour」のサッシャ・ヴィエルニ、衣装はマルタン・マンジェラ、主演がユアン・マクレガーと豪華。初めてのグリーナウェイ監督作品であれば「建築家の腹」や代表作「コックと泥棒、その妻と愛人」から観ることをおすすめします。
▲グリーナウェイ監督はこの作品後には映像アーティストとしての活動が中心になっていきました。デビッド・リンチとグリーナウェイ監督って同時期に共に巨匠として自我の強い作品を発表していたと勝手に思っているのですが、「枕草子」と同じ1997年に、一方のリンチ監督はネオノワール「ロスト・ハイウェイ」でバイオレンス爆発。その二年後の「ストレイト・ストーリー」では人情的な物語に転向してアカデミー賞にまでノミネートされているのに対し、グリーナウェイ監督は「8 1/2の女たち」そして「Tulse Luper Suitcases」を通じて完全に前衛アーティスト化したのは興味深いです