国際会議のハイブリッド開催

ご無沙汰しております。

先日、国際的なMICE統括団体であるICCAの年次総会が開かれ、京大大学院生としてオンラインで参加して参りましたので簡単に内容をご紹介させていただきます。

今年は11月1日から3日間、台湾・高雄市をメイン会場としたハイブリッド・マルチハブ方式で開催されました。10月の京コネラジオでワンワンさんから少し紹介があったこちらのイベントですが、昨年はアメリカのテキサス州、ヒューストンで開催されました。コロナの影響で今年は初めて高雄のメイン会場(オンサイト)とオンラインのハイブリッド開催となったそうです。高雄に行って参加したかったですが、家のリビングから参加いたしました。

ICCAとは

International Congress and Convention Associationの略でヨーロッパに本部を置くMICEの統括団体です。MICE業界の世界的なリーダーであり、国際MICE市場のデータや、教育、コミュニケーション・チャネル、ビジネス開発、ネットワーキングの機会等を提供しています。1963年に設立され、現在は世界中の100の国と地域で1,100社以上の会員企業と組織で構成されています。年に1度開かれるこの総会では、世界の政府観光局、コンベンションビューロー、MICE施設、PCO/DMC、旅行会社、研究機関から様々な方々が参加し、関係者とのネットワーキングや国際トレンド把握といった効果を見込むことができます。

参考 About ICCAICCA

MICEとは

企業等の会議(Meeting)、企業等の行う報奨・研修旅行(インセンティブ旅行)(Incentive Travel)、国際機関・団体、学会等が行う国際会議 (Convention)、展示会・見本市、イベント(Exhibition/Event)の頭文字を使った造語で、これらのビジネスイベントの総称です。(JNTOより)

参考 MICEとはJNTO

MICE は多くの集客と交流が生まれ新しいビジネスを呼び込む機会をもたらすものとして注目されています。昨今話題の日本型IR(統合型リゾート)の基本コンセプトの一つに「IRを世界最高水準のMICEデスティネーションに」することも掲げられており、観光地や地域経済の発展に欠かせない要素となっています。

今年のICCA総会はオンラインとオフラインのハイブリッドに加え、マルチハブ方式で高雄以外に8つのハブ(スペイン、南アフリカ、韓国、マレーシア、南米、ルクセンブルク、北米、サウジアラビア)で同時開催されました。メイン会場は高雄ですが、それぞれのハブで開催されているセミナーもライブ配信され、時間が合えば参加することができるようになっておりました。世界中から参加できることもあって、オンライン、オフライン合わせて1,500名が参加し、過去最高だったそうです。今年のテーマはTransforming Global Events Together(共に国際イベントを変革する)ということで、コロナで大打撃を受けた国際会議業界の今後の在り方、イベントの在り方について議論する場となりました。

▲高雄の会場の様子

中央ヨーロッパの時間帯でイベントが進むため、時差の関係もあり基本的に高雄で開催されている講演にオンラインで参加しました。中でも印象的だったのが、ある有名企業のイベント担当の方からの講演で、オンラインイベントの在り方について議論するものでした。コロナが流行した3月から現在までに試行錯誤しながらオンラインイベントを開催し、統計的なデータやイベントから得た学びについて詳しく学ぶことができました。中でも驚いたのが、アメリカ国内で実施していた国際イベントをオンライン開催に変えたことで参加人数が約3倍に増え、昨年は80%がアメリカから参加していたのに対し、今年は60%がアメリカ以外の国から参加していたそうです。また、運営側の費用もオンラインにしたことによってライブと比べ約60%もコストカットされ、オンラインに変えたことで新たな顧客層を獲得しただけでなく、コストカットといった効果があったそうです。

オンラインイベントからの学びとして1つはライブで行っていたイベントをオンラインで同じように実現することは不可能で、オフラインとオンラインのイベントは全くの別物として捉えるべきだということでした。2つ目は1つ目とも関連して、オンラインだとイベントの役割が変わるということでした。ライブ開催の場合、参加者にとってイベントに参加する際には交通費や宿泊費等が発生し、それがハードルとなることがあります。それでも参加したいと思わせる、人々を惹きつけるコンテンツが必要となり、ライブイベントは一種のプロモーション的な役割を果たします。しかし、バーチャルの場合はそういったハードルが低くなるため、イベントの役割、内容が変わってくるというものでした。3つ目は発信者側の視点で、これまでライブイベントでは演劇をしているかのような演出(話し方やジェスチャー等)が求められたが、バーチャルの場合は画面に向かって話すため映画やテレビ風に情報提供することが求められるとのことでした。これらの学びに加え、オンラインイベントでは参加者とホスト、参加者同士の交流を促すこと、参加者に参加している感覚を感じてもらうこと、イベントを共創することが重要であるということを学びました。そして今後ライブイベントが戻ってくる中でデジタル化はライブイベントの補助要素として機能するのではなく、ライブイベントの核となって展開されるだろうとの見方がありました。

▲ライブ配信の様子
▲シンガポール×高雄×オンライン

実際にICCA総会では、ライブ配信の映像の下にライブチャット機能があり、登壇者に質問したり、参加者同士で会話をしたりすることができるようになっておりました。また、SNSとも連動しており、ツイッターやインスタグラムで投稿された内容がICCAの特設ページに反映され、講演中に登壇者が投稿内容に触れる等して、参加者が「参加している」ことを感じることができるようになっていました。その他にもHP上で「ネットワーキングルーム」が設定されており、ログインすると部屋にいる参加者とZOOMのように画面越しで会話ができるような仕掛けもありました。

ライブイベントと比べ、画面越しのためサーバーがダウンするというシステム障害に加え、会場の雰囲気やテンションに気持ちがついていかないといった不便さが少し感じられましたが、デジタル技術を活用した無限の可能性を感じた3日間となりました。また、その場にいるわけではないため、ネットワーキングルームやライブチャット機能を使用しない限り誰とも交流せず、ただただ番組を見て終わるといった参加になってしまうため、より積極性が問われると感じました。それら以外は何の不便もなく、ライブ開催と変わらない学びが得られたのではないかと思います。ただ、オンラインではMICEを通じて地域にお金を落とすことができないため地域活性化という意味ではイベントのあり方について考えていく必要がありますが、オンラインの参加により現地に足を運びたいと思わせる効果は抜群にあると感じました。コロナが落ち着いたら高雄に行ってみたいです。