先週末には再び GoTo トラベルを利用して福井県で開催されていた renew に行ってきました。京都駅からはサンダーバードで75分程度、北琵琶湖の景色を眺め、お弁当を食べている間に到着します。renew は鯖江市と越前市で開催される工房見学イベントです。会期中は地元の漆器や和紙、打刃物、箪笥、眼鏡フレームのなど工場がオープンファクトリーとして一般公開されます。今年の renew は新型コロナウィルスの影響でいくつかのイベントはオンライン配信になるなど、現地とのハイブリッド形式で3日間にわたり開催されました。

我々の日常ライフスタイルが西洋化、デジタルなどへと変化する中、高額な箪笥や襖、和紙などの需要は年々減っています。高齢化が進み、後継者探しに苦労されている製造者もいらっしゃるそうです。そのような今、 renew は工芸品の認知度を高め、手作り製品を価値を伝え、更には今までにはなかった新要素を取り入れた商品を生み出す、重要な役割を担うイベントです。台風が近づいていたので直前まで行くのをどうしようかと迷っていましたが、公式サイトのこちらのメッセージを読んだ後に直ちに電車の予約をしました。
「この街はいつも知恵を絞ってきた。雪深い土地だからこそはじまったものづくり。先人たちは生きていくために腕を磨き、競い合うことで、いつしか街全体がひとつの大きな工場になった。高度経済成長期の活気。バブル崩壊後の停滞。酸いも甘いも経験しながら、振り落とされないように、この街は時代の声に合わせて常に変化してきた。
そしてコロナ時代。年内廃業の可能性が約4割と、伝統工芸の窮状が叫ばれている中、それでもこの街は前を向いて行動する。もう一度知恵を絞り、これからの時代に合った新たなアクションを。さらに変わり続ける産地のチャレンジをぜひ見て欲しい。
変わり続ける産地の、変えていく未来。
私たちの大きな熱量が、誰かの灯火になるように。」

到着後、まずは「紙の文化博物館」で参加者登録し、5軒の工房を見学しました。大滝町には今でも40以上の和紙生産者が集まっています。越前和紙の始まりは、さかのぼること1,500年前だそうです。周辺は薪を焚いている大きな煙だったり、和紙が外で干されていたりと、きっと何十年も変わっていない風景があります。

実際に手作業で和紙を作る過程を見学すると、作業の細かさと手間に驚かされます。昔ながらの良い技術や道具を残しつつ、新たな手法を取り入れて進化しているそうで、出来上がった完成品はどれも素材というよりは芸術作品でした。



次には700年の歴史を持つ打刃物を見て回りました。刀剣制作に適した地を求め越前に来住した京都の刀匠が、近郷の農民のために鎌を作ったことから始まったといわれています。



越前打刃物の価格はちょっと頑張れば手が届きそうな物だったり、高額な商品になると一本が5万円以上と様々です。注文してから納品までが3年待ちのナイフも存在します。イケアでステンレスの包丁を1,999円で購入できる時代ですが、このように製造過程を実際に見て回ることで、単に便利で安ければいいのではない、手作りの刃物の価格に対する納得感が生まれてきました。
機械化とデジタルトランスフォーメーションが進み、ヒトを必要としなくても実践可能であるコンピテンシーレベルが上がっています。今回見て回った伝統工芸はいずれも大量生産を進め陳腐化するのではなく、「知の探索」を開拓し新たな要素を取り入れながら進化しています。
ある伝統工芸士の方からは「ものづくりは、単純な1+1=2の作業ではない、素材や状況次第で更に大きな価値が見いだせるんだ」というお話を伺いました。この先、我々のライフスタイルがどう変化しようとも、伝承された技術を軸に躍進し、新たなものづくりを創生できるのはヒトでないとできないはずです。一つ一つ丁寧に手でつくることで、機械では決して真似をすることが出来ない、二つとして同じものができない唯一の価値を見出している越前和紙や打刃物といったものづくりの技術は、我々の生活には今後も必要だと renew を通じて確信できました。
renew:
https://renew-fukui.com
山次製紙所:
https://yamatsugi-seishi.com
長田製紙所:
https://osada-washi.jp
龍泉刃物:
https://ryusen-hamono.com