京都市 TOP100選に
持続可能な観光の国際的な認証団体であるグリーンデスティネーションズが実施する表彰制度で「TOP100 選」に京都市が選ばれました。日本国内で持続可能な観光への取り組みが本格化しつつありますが、国内の他の観光地に先駆けて持続可能な観光に対する取り組みが一定の評価を受けたことになります。
先日私は、持続可能な観光について学ぶGSTCトレーニングプログラムに参加しました。(GSTCは、世界で持続可能な観光の推進を担うNGOです)GSTCトレーニングプログラムは3日間のプログラムです。2日間は座学でGSTCが定める基準や指標の考え方を学びます。3日目はフィールドワークとして、持続可能な観光に取り組む事例を見学します。今回のフィールドワークは2019年12月に開業した複合型商業施設「GOOD NATURE STATION」でした。今回は、GSTCトレーニングプログラムのフィールドワークを通して見えたGood Nature Stationのサステナブルな取り組みをいくつか紹介したいと思います。
GOOD NATURE STATIONのWEBサイトはコチラ
HELLO GOOD NATURE!
GOOD-BYE BAD NATURE!
GOOD NATURE STATION は、1F〜3Fにオーガニックな食品を販売するマーケットやレストラン、パティスリー、コスメやクラフトなどを扱うショップがあり、4F〜9Fがホテルになっています。楽しみながら、健康的で良いものを自分らしく取り入れるライフスタイル(=GOOD NATURE)を提供することをコンセプトにしています。健康や環境にストイックに向き合うのではなく、我慢せず自然に楽しむことを強調しているのが印象的です。正直なところ、施設を訪れる前にこのコンセプトを見たときは、施設の好感度を高めるために言わばファッションとしてサステナビリティを強調しているだけだろうと思っていました。実際には、かなり本格的な取り組みをされていることに驚きました。
WELL認証+LEED認証
GOOD NATURE HOTEL KYOTO は、環境や健康に配慮した建物が認定される「WELL認証」や、世界基準の環境評価ツールであるLEED認証を取得しています。

サステナブルなチョコレート
1FのパティスリーRAUには、美しいチョコレート菓子が並んでいます。フェアトレードかつ無農薬のカカオをコスタリカから仕入れ、製造、販売まで行う「Farm to Bar」を実践されています。チョコレートを加工する際に出るカカオの外皮(ハスク)は通常廃棄されますが、ここでは有機煎茶とブレンドしたカカオティーやカカオカレーなどの商品化を行い、食品ロスの軽減につなげています。
食品ロスの削減に関連しては、食品廃棄物を館内に設置した生ゴミ処理機で堆肥化し、滋賀県で減農薬農業を営む農家に提供されています。将来的には、その肥料で作って育てたお米などを施設で販売されるようです。

完全自然派のコスメ
3Fのショップで販売されるオリジナルコスメブランド「NEMOHAMO」は、排水をはじめとして汚染物質を全く排出しない、環境に優しい工場で作られています。有機JAS認証を受けた農園で栽培される約20種類の植物を使用し、花や葉はもちろんのこと、根や茎も余すところなく使用し、無駄がなく環境にも健康にもいいコスメとして高い評価を受けているようです。
脱プラにこだわる容器包装
近年のプラスチックごみによる環境汚染の深刻化への問題意識から、館内ではできる限りプラスチック廃棄物を出さない取り組みが行われていました。1Fのマーケットのイートインコーナーで販売されるスープやドリンクは、バタフライカップ(プラスチック製のフタが不要な紙カップ)で提供されます。ストローはさとうきび由来、ナイフやフォークは微生物等の力で水と二酸化炭素に分解される生分解性プラスチックを使用。ビニール袋の代わりに紙袋、ホテルでは歯ブラシ、ヘアブラシ、髭剃りを客室に置かず持参してもらうライフスタイルを提案しています。一つ気になったのが、昼食をとったレストランのおしぼりがプラスチック製の袋に入った使い捨てタイプのものだったことです。コロナ対策の一環だとは推測しますが、受講生の中では残念がる声が出ていました。とはいえ、容器包装類からプラスチック製品を排除しようとする取り組みはかなり徹底していると感じました。

持続可能な観光を、京都から
GOOD NATURE STATION の商品づくりやサステナブルな取り組みをご紹介してきました。館内はとてもおしゃれで洗練されており、イチ商業施設、イチ宿泊施設として見ても十分オススメできる雰囲気です。サステナブルな取り組みはかなり力を入れてやっているのに、それを感じさせないように工夫されているのだろうと思います。サステナブルなものに対する消費者の感度も上がっているので、これからはこうした施設・ホテルが選ばれていくだろうと感じさせてくれました。
持続可能な観光地として「TOP100選」に選ばれた京都市、先進的にサステナブルな商品・空間を提供するGOOD NATURE STATION、持続可能な観光が京都から実現していく可能性を感じさせてくれます。今回GSTCトレーニングプログラムを京都で受講し、京都で観光を学ぶ私自身も、引き続き持続可能な観光というキーワードにアンテナをはっていきたいと思います。