京都府の中央に「日本一の田舎」と呼ばれる地域があることをご存知でしょうか。
それは美山町です。美山町は、京都府のほぼ中央に位置しており、京都市から車で約1時間程度の距離にあります。町の96%が森林のとても自然豊かな農山村です。日本の伝統的なかやぶきの家屋が多く残っているのですが、文化財として保存されているわけではなく、実際にそこで暮らしている人々がいます。

かやぶきの里をはじめ魅力的な観光資源のある美山町には、観光によるまちづくりを主導する南丹市美山観光まちづくり協会(通称:美山DMO)という組織があります。この美山DMOと、私が在籍する京都大学経営管理大学院は連携協定を結んでおり、観光地経営に関するプロジェクトが進められています。
京都大学経営管理大学院ウェブサイト:https://www.gsm.kyoto-u.ac.jp/ja/news-event/news/2482-20190520.html
本日のブログでは、DMOについて基本的なことをご紹介したいと思います。
DMOが必要とされる背景
はじめに、DMO(=観光地域づくり法人)の定義について観光庁の説明を見てみましょう。
観光地域づくり法人は、地域の「稼ぐ力」を引き出すとともに地域への誇りと愛着を醸成する「観光地経営」の視点に立った観光地域づくりの舵取り役として、多様な関係者と協同しながら、明確なコンセプトに基づいた観光地域づくりを実現するための戦略を策定するとともに、戦略を着実に実施するための調整機能を備えた法人です。
観光庁ウェブサイト:観光地域づくり法人(DMO)とは?
https://www.mlit.go.jp/kankocho/page04_000048.html

DMOが必要とされる理由を一言でいうと、観光による地方創生を実現することです。人口減少により縮小する地域経済を発展させるためには、地域の外から観光客に来てもらうことが一つの対策になり得ます。
美山町を例にみてみましょう。1960年には1万人を超えていた美山町の人口は現在約3,600人、60年で1/3程度に減少しています。また高齢化も進行しています。雇用が減り、若者が町外へ出ていくと地域の担い手が減っていきます。そこで美山町の豊かな地域資源を活かし、観光によって地域に経済効果や雇用を生み出すためにDMOが設立されたということです。
国や地方自治体から財政的な支援が得られることもあり、日本各地にDMOが設立されました。その数は、候補法人を含め281団体となっています。(2020年3月31日時点)
DMOの現在地
DMOの登録制度は2015年に創設されました。今年で5年目を迎えるまでの間に、専門家による検討会や調査が実施されDMO登録制度の評価が行われました。そして、評価で指摘された課題をもとに、登録制度の一部が見直されることになりました。

出典:観光庁ウェブサイト:「観光地域づくり法人の登録制度に関するガイドライン」の公表について https://www.mlit.go.jp/kankocho/news04_000169.html
本日のブログでは、上記の改正内容の詳細な説明は割愛しますが、役割分担、財源、人材、組織などの項目が課題視されていると思ってください。
2つのM
DMOは、ManagementとMarketingの2つの「M」を期待されます。そのうち、比較的イメージしやすいのは「Marketing」ではないかと思います。地域資源を磨き、データ収集と効果的なプロモーションをするということです。
では、「Management」とは何を期待されているのでしょうか。さきほど登録制度の改正の中であげられた課題の役割分担、財源、人材(の確保と育成)、組織というは全てマネジメント当たると思います。先日、ある勉強会でDMO職員の方とマネジメントについて議論することがありました。その時は地域の進むべき方向性(つまりビジョン)が明確になっていない場合に、誰が先頭に立って関係者を巻き込むのか、というテーマでした。その勉強会の結論としては、DMOが担うことが望ましいという結論に至りました。(地域によって、行政機関担う場合もあり得ると思います。)観光庁の定義の中にも「多様な関係者と協同しながら、(中略)戦略を着実に実施するための調整機能を備えた法人」とあるように、目的のために関係者を巻き込むことがDMOに求められ、これがマネジメントの一つの側面と理解することができます。
観光地経営を学ぶ
私が在籍している観光MBAコースでは、観光地経営について学ぶ「デスティネーション・マネジメント論」という科目が提供されています。日本にDMO制度を導入した第一人者でもある大社充氏が担当しています。また美山DMOとの連携協定をはじめ、実践的なプロジェクトに参加することも可能です。観光MBAコースについての学びや課外活動に興味を持たれた方は、京都コネクションベースが提供する「オンライン雑談」も聞いてみてください。
京都コネクションベース Vol.08 オンライン雑談 -OZ編-https://www.youtube.com/watch?v=28-mMuR4K7I
[…] 参考 Kyoto Connection BaseDMOとは何か […]
[…] さきちゃんブログでは、熱川プロジェクトについて「授業だけじゃない大学院の魅力②」のお題でプロジェクト概要が丁寧に紹介されています。また、京都大学と美山の関わり合いについては、OZの「DMOとはなにか…」で丁寧に背景等やまとめられているので、興味ある方はぜひご覧ください。 […]